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尊厳

 

 家族の見舞いに行ってきました。
 一週間前に入院。いまもICUに入っています。


「本人の尊厳」というものを考えさせられています。ずっと。


 手元に手を添えると、しっかりと握り返してくれ、その手を伝って会話をしてきました。


 なにか言葉を出して訴えようとしているが、聞き取れない。
 話しているつもりなのにわかってもらえない、というのは、どんなにもどかしいだろうと思うから、わかっているふりをしてしまう――わたし。


 呼吸器(酸素投与マスク)を自ら外そうとするため、両手に拘束帯をつけられていました。
 おむつも不本意だという思いからでしょう、とりたがる。


 看護師さんが、家族がきているから、ということで、すこしのあいだだけ拘束帯をとってくださいました。

 手が自由になるや否や、もがいて、懸命に、呼吸器を外そうとする。

 いっしょに行っていた家人は、「ごめんね、これはだめよ」って制止する。


 が、わたしは制止せずに、やりたいようにやらせてはどうか、といった。


 いやなものはいや、外したいものは外したい、それが本人の意思。
 それを表明すること、自らの意思に従って行動しようとすること。


 それができるうちは、したいようにさせたい。そう思ったんです。


 いざ本当に機械が外れそうになったら、そっと本人が気付かないように戻す――。


 こういうやり方、もしかしたら、わたしが一番残酷な人間なのかもしれないけれど。


 もうほとんど聞き取れなくなってしまっている言葉を聞き返さずに、わかったふりをしてうなずくことも。

 握った手を伝ってくる本人の思い、なんていうのも、こちらの勝手な解釈かもしれないわけですし。


 縁起でもない話を持ち出すようだけれど、人が「尊厳死」を選択するとき。
 わたしの家族は、まだ本人の意志表示らしきものがあるけれど、そういった当事者の方たち・ご家族は、本人の意思が確認できなかったり、確認らしきができたとしても、本当にその解釈は正しいのかとか、その狭間で苦悩するのだろう。


 わたしにしがみついて、必死に起きあがろうとする。

「自分はこんなふうにしてひとさまの世話にはなりたくないんだ」と言わんばかりに。

 ついこのあいだまで、まだ話せたときに本人が言っていたことだけれど。
 そういう人だからなぁ。


 そんなことを思い出しながら、抱きしめた。


 たんの吸引をしていただいて、相当苦しがっていたので、それを終えて、ほどなくして帰ることにした。


 あまり「苦しいこと」と「家族」が、本人のなかで結びつかない方がいいと思ったから。
「家族」=「苦しい」
 そんな思い出、いまからつくることないでしょ。


大川内 麻里のサイト OkawauhiMari.net
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大川内 麻里が取締役を務める 創藝舎
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